2022年3月4日,満を持してリリースとなった
「グランツーリスモ7」(
PS5 /
PS4)。シリーズ25周年記念作品となる本作は,420以上の車種,34のロケーション,97のコースレイアウトを収録。グラフィックスや車体の挙動表現にもさらなる磨きがかかり,リアルなレースを思う存分を楽しめる。
だが,レースで勝つことだけが本作の面白さではない。クルマのカスタマイズにこだわる,クルマが魅せる美しい瞬間を切り取る,クルマを愛する人たちと交流する……など,“クルマのテーマパーク”と呼べるような,さまざまなコンテンツが用意されているのだ。
ということで,本稿では
“レースをしない”グランツーリスモ7の楽しみ方を紹介しよう。さも一家言あるかのように書いたが,実は筆者,クルマに関してはほとんど素人同然で,頻繁に運転こそするが,あくまで“移動手段”の1つとしか思っていなかった。そんな筆者でも本作を存分に楽しめたので,「レースゲームは苦手だから……」と敬遠していた人も,ぜひ読んでほしい。
気分はプロモデラー!
「GTオート」「リバリーエディター」で愛車をとことんカスタム
ワールドマップ(メニュー画面)から入れる
「GTオート」は,洗車やオイル交換などのメンテナンス,クルマのエアロパーツやホイール,ドライビングギア(レーシングスーツやヘルメット)などの購入やカスタマイズができる施設。世界に1台だけの愛車を作り出せるのだ。
シンプルなユーザーインタフェース。初心者でも迷わず操作できるだろう
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筆者はどこから手を付ければいいのか迷いつつ,まずはホイールを変更することにした。面食らったのは,とにかくラインナップが豊富なこと。ホイールのデザインってこんなにあるのか……と,ひとつひとつのデザインに込められたこだわりに驚いた。
RAYS(レイズ),WORK(ワーク),BBS(ビービーエス),ENKEI(エンケイ)など,実在ブランドのホイールが勢ぞろい
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前述したように,筆者は「クルマ好き」とは程遠かったので,カスタマイズを考えたこともなかった。タイヤを購入するときにホイールを選ぶことになっても「よく分からないから,何でもいい」と思っていたくらいだ。
だが,GTオートで(手を加えたことが分かりやすいだろうからと)ゴールドのホイールに変えてみると,黒いタイヤに金色が映えてなかなか恰好いい。
気を良くしてほかのパーツにも手を加えてみる。エアロパーツを替えるとクルマのシルエットが驚くほど変わるし,ボンネットピンや牽引フックなど,今まで存在すら知らなかったパーツも,しばらく触っていると「差し色に赤をいれたら可愛いかな」など,頭の中にイメージが湧いてくる。気分はプロモデラーだ。
ナンバープレートのタイプも5種類から選べる。パーツの変更にはゲーム内通貨「クレジット」が必要になることも。クレジットはレースの賞金として稼ぐのが常道だが,リアルマネーで手っ取り早く購入することもできる
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もちろん車体の塗装も可能。カラーパレットから基本的な色を選択できるほか,ガラスフレーク入りやカーボンなど,個性あふれる “スペシャルカラー”も1200種類用意されている(スペシャルカラーの使用にはクレジットでの購入が必要)。スペシャルカラーは実車の測定データをゲーム内で再現しているとのことだ。
それほどクルマに詳しくない人でも知っている“ビートル”こと「フォルクスワーゲン 1200 '66」に,4種類のスペシャルカラーを適用してみた。同じクルマでもかなり違う印象に
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ボディーカラーだけでなく,その上に貼るデカールにもとことんこだわれる。
「リバリーエディター」では,デカールひとつひとつをレイヤーとして管理でき,位置,大きさ,色の調整が可能だ。メーカーロゴなどに加え,円,三角形,長方形など,汎用性の高いものも多数用意されているので,組み合わせの工夫次第でかなり幅広いデザインが楽しめるだろう。
プリセットされているデカールだけでも使いきれないほどの数
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腕に覚えがあるデカール職人は,公式サイト「グランツーリスモ・ドットコム」のデカールアップローダーから自信作をアップロードして公開するのもいい。もちろんほかのプレイヤーの作品も閲覧できて,気に入ればクリップして自分の車に適用できる。
ウインドウステッカーをポップな水玉にしてみた
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フロントには大きく「グランツーリスモ」のロゴを配置。コントラストが素敵だと自画自賛している
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クルマのことをまったく知らなくても,パーツを付け替えたり,カラーリングを変えたりして
自分だけの一台作り上げる作業にはわくわくできるはず。筆者もカスタムの虜となってしまった。
もちろんクルマ好きなら,自分の愛車をゲーム内でそっくりそのまま再現したり,次に買うパーツを“試着”してみたりといったこともできるだろう。
また,ヘルメットとクルマのカラーリングを合わせてみたり,企業のロゴを全面にビッシリ配置してみたりと,架空のレーシングチームを想定してデザインするのもいいかもしれない。アイデアは無限に浮かぶ。
完成! リアルに再現されたクルマに自分のデザインが反映される嬉しさを,ぜひ味わってみてほしい
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あなたも凄腕フォトグラファー!
「スケープス」で,世界の絶景を舞台に愛車の魅力をを切り取る
「GTオート」で仕上げた納得の1台を,より生き生きと,かっこよく演出したいなら,
「スケープス」に行こう。世界43か国の名所やサーキットなど,いわゆる“映えスポット”に車を配置して,写真を撮影できるコンテンツだ。
同じロケーションでも,撮影できる場所はさまざま。「どこで撮影するか」を決めるだけでも迷ってしまう
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スケープスでは,まず撮影場所を選び,所持しているクルマから任意のものを配置する(複数台配置できる場合もある)のだが,単にクルマを置くだけで終わらないのがグランツーリスモ。配置したクルマの前輪切れ角,ヘッドライト・ブレーキランプ・ウインカーの点灯/非点灯,車体のキズや汚れ,ドライバーの有無といったところまで詳細に設定し,被写体となるクルマに表情を付けられる。
写真の中に映っているものを自由に動かしているような,不思議な感覚
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撮影では,絞りやシャッタースピード,露出補正などを設定可能。さらに,素人では難しい流し撮り(移動する撮影対象に合わせてカメラを動かしながらシャッターを切る撮影方法)も,車体の進行速度やカメラの追尾率を細かく調整して思い通りに仕上げられるのだ。
カメラの扱いに慣れていないプレイヤーだと,絞りや露出補正と言われてもピンとこないだろうが,環境設定でガイダンスをオンにしておけば,各項目にカーソルを合わせるだけで丁寧なガイドが表示される。特にホワイトバランス調整やエフェクト設定などは,表現したいシチュエーションによっては複雑なものになるため,ガイドにはかなり助けられるはずだ。
もっと手軽に撮影したいなら,16種類の「エフェクトプリセット」が役立つ。過去に撮影した写真のエフェクト設定を保存して別の写真に適用することもできるので,サクッと雰囲気を変えて楽しめるのだ。
入り組んだ高架が「ヤマタノオロチ」とも呼ばれる箱崎ジャンクションでの撮影。流し撮りで走行のスピード感を表現した
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強めのビネット(周辺部の光量を落とす効果)を入れてみた。夜の雰囲気が際立つ
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ここだけ切り出しても1タイトルとして成立するのではないか……と思うくらいに遊び倒せる「スケープス」。たとえクルマにそれほど興味がなくても,写真撮影を始めてみたい人や,コロナ禍の中,世界の美しい風景で心を癒やしたい人にオススメだ。
見ているだけでも楽しい!
「ショーケース」で世界中から集まった力作を堪能
「ショーケース」では,「GTオート」でカスタマイズしたクルマや,「スケープス」で撮影した写真,レースのリプレイ動画を世界のプレイヤーに向けて公開できる。
写真を選んで公開するか決めるだけなので簡単だ
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お気に入りの一枚を公開!
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世界中にプレイヤーがいるグランツーリスモだけに,本作の発売から日も浅いにも関わらず,既に膨大な数の作品がアップロードされており,しかも力作揃いだ。
作品に付けられたタグに加えて,コンテンツの種類,クルマの国,メーカー,車種などを指定できるなど,検索機能も充実。お気に入りのクリエイターをフォローする,作品をリポストする,“いいね”やコメントをつける,自分のコレクションに加えてすぐ見返せるようにするといった,コミュニティ機能もある。
“人気のタグ”検索で,今盛り上がっている一作を探すこともできる
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自分が持っていないかっこいいクルマを発見すると手に入れたくなるし,個性的なスタイルのクルマは,自分でカスタムする際の参考になったりする。素敵な作品を閲覧して“いいね”を押しているだけでも,あっという間に時間が経ってしまうので,忙しいときの筆者はここに入らないようにしているくらいだ。
ぜひ実際のショーケースで膨大な作品たちを味わってほしい
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他人のリプレイ動画も,実際に色々見てみると興味深い。タイヤスモークを上げながらのコーナリングや,ド派手なクラッシュなどには目を奪われるし,同じクルマが集まって走る様子は壮観だ。これもグランツーリスモのグラフィックスクオリティがあればこそだろう。
さらにおすすめしたいのが,任意の曲をBGMにしてリプレイ動画を楽しめる“ミュージックリプレイ”機能。理想のムービーを作り上げて楽しもう。
筆者は魅せるミュージックリプレイをディスプレイに表示し,“デジタル窓”として楽しんでもいる
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「カフェ」に通ってクルマ文化の奥深さに触れる
さまざまな知識を得ることも,立派なクルマの楽しみ方。例え免許や愛車を持っていなくても,どっぷりとクルマの世界に浸れる。
前述したように,筆者はクルマに対する知識がほとんどなかったが,
「カフェ」で,マスター“ルカ”をはじめとしたクルマを愛する人との気軽なおしゃべりを楽しむうちに,この世界の奥深さを知ることになった。
カフェに行くと,ルカがメニュー(依頼)を渡してくれるので,特に目的がない人はこれに沿ってゲームを進めるといい。ここに登場するクルマについても,ルカが丁寧に教えてくれる
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ゲームで手に入れたクルマに,どんな歴史や逸話があったのか。先進的な技術がどう活かされたのか。本作を遊んでいなければ,どこかでその情報に触れていたとしてもピンとこなかったかもしれない。そのクルマに触れながら聞く分かりやすい蘊蓄は,家族や友人のことのように親しみや興味が湧くし,なんとなく知っていたつもりのことでも,より理解が深まるのだ。
そんな貴重な情報が詰まったカフェでの会話ログがアーカイブされないのは少し残念なところなので,今後のアップデートに期待したい。
カフェの常連から話を聞けることも。これは「ハイブリッドカー」の説明
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美しい映像を見ながらクルマを学べる贅沢
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特定のクルマについてガッツリ知りたい場合は,「ガレージ」のクルマ図鑑を見るといいだろう。熱の入った説明文には,クルマを知らないプレイヤーをも惹きこむ力がある。
それぞれのクルマに,歴史やドラマがある
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こういった情報を得ることで,街で見かけるクルマの“解像度”も上がり,印象が大きく変わった。
今まで“ただのクルマ”だと思っていたものを,先人の情熱や技術の結晶だと感じるようになったのだ。
それほどクルマに興味のない人でも楽しく遊べる……という段階を飛び越え,誰でもクルマの楽しさ,美しさを発見し,どっぷり浸かれると感じた「グランツーリスモ7」。多彩な遊びかたを分かりやすく提案してくれるので,自分に合った方法でマイペースに遊んでいける。
速く走れなくても,レースに勝てなくても楽しい。クルマという文化の奥深さ,本作の懐の広さは,想像以上だ。