継続は力なりという言葉がある。思うにこの世の中,ゲーマーほどこの言葉を実践している人種もほかにいないのではないだろうか。
ゲーマーは往々にして,レアアイテムがドロップするまでモンスターを狩り続けたり,目当てのカードが出るまでガチャを回し続けたりする。次の挑戦で出るかもしれなければ,1年かかっても出ないかもしれない。だがゲーマーは決してあきらめずに挑戦し続け,最後には目的を遂げるだろう。それは,進むべき道も分からないこの混沌とした現代社会を生き抜こうとする,人々の縮図。
そう,ゲーマーとは現代社会の荒野に生きる,最後の挑戦者なのである。あとはそれが現実の勉強や仕事に応用されれば完璧なんですよね,うん。
さて,ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の中で異彩を放っている,この「
放課後ライトノベル」も,今回で連載回数3ケタの大台に突入する。知人に「前フリが一番面白い」「前フリとプロフィールしか読んでない」とこき下ろされながらもコツコツ続けてきた結果,ここまでたどり着くことができた。これもまた「継続は力」の一例だろう(力になっているかは不明だが)。
記念すべき100回めとなる今回は,通常のレビューはお休みして,2年間の連載の軌跡を振り返ってみたい。
●妥当? 意外? 「放課後ライトノベル」ならではのアクセスランキング
まず最初に,上の表を見ていただきたい。これは第1回から第99回までの本連載の中で,
記事へのアクセスが多いトップ15を表にまとめたものだ。
一度掲載された記事はその後も掲載され続けるので,基本的には掲載期間が長い,つまり回が若いものほどアクセスが多くなる。実際,上の表の中でも,半数以上が2010年に掲載された記事となっている。もっとも,単純に古い記事ほどアクセスが多い,というわけではないのが興味深いところだ。
中でも注目したいのは,『とある魔術の禁書目録』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『フルメタル・パニック!』といった,アニメ化もされた大人気作が名を連ねる一方で,『アンチ・マジカル』『蒼穹のカルマ』『妹ドラゴン兄若ハゲ』などの,どちらかというと「マイナー」な作品の記事がランク入りしているところ。
普通はネームバリューや売り上げの高い作品の記事のほうがアクセスが多くなりそうだが,ゲーム情報サイトという,ライトノベルそのものとは縁の薄いサイトの記事ということで,あまりそういったことにとらわれずに読んでもらえているのかもしれない。筆者たちも「アウェー」の読者に読んでもらうべくあれこれと工夫しているつもりなので,その効果が多少なりとも出ていれば嬉しい限りだ。
●レビューはしても,作品は終わらない! 紹介作品その後の動向
ところで,本連載で紹介している作品の多くは,紹介したあとも引き続きシリーズを展開している。普段はなかなかその後の動向をお知らせすることができないので,上位作品についてはこの機会に軽く触れておきたい。
第1位の『狼と香辛料』は,なんとホロが○○してしまった17巻「Epilogue」で本当の完結。この7月には待望の新作
『マグダラで眠れ』が始まっている。著者の近況については「
こちら」のインタビュー記事も合わせてどうぞ。それにしても/人◕‿‿◕人\←こいつは相変わらず人気ですなあ。
第2位『僕の妹は漢字が読める』は一発ネタの作品かと思いきや,順調に巻を重ねて現在第4巻。コミック版も展開しており,今後の飛躍に期待。
第3位の『とある魔術の禁書目録』はその次の巻から
『新約 とある魔術の禁書目録』へとリニューアル。もっとも,物語自体は22巻の続きとなっているので,安心して手に取ってほしい。劇場アニメ化も控え,人気ぶりはまだまだ健在だ。
第5位の『蒼穹のカルマ』は8巻で完結。1巻からの伏線を綺麗に回収しきった,見事な大団円だった。現在,著者の別作品
『デート・ア・ライブ』がアニメ化を控えている。
順調に巻を重ねる『俺の妹がこんなに可愛いわけがない(7位)』,『僕は友達が少ない(14位)』,『ゴールデンタイム(15位)』に,新シリーズが好調の『フルメタル・パニック!(6,9位)』,『魔術士オーフェンはぐれ旅(8位)』と,そのほかの作品は引き続きシリーズ展開中。しかし『パンツブレイカー(13位)』が
『パンツブレイカーG』となって再登場するとは,思わなかったですよホント……。
ランク入りした作品の中には,『アンチ・マジカル(4位)』,『ウルトラマン妹(10位)』,『妹ドラゴン兄若ハゲ(11位)』と(今のところ)1冊で終わっている作品もいくつかある。もっとも,ライトノベルでは思い出したように続編が刊行されることもしばしば。著者の他作品などの動向に注目しつつ,続刊を祈りたい。
●目指すは200,300回。これからもよろしくお願いいたします
それにしても,2年間連載を続けてきてつくづく感じるのは,ライトノベルの刊行数の多さだ。本連載では基本的に,掲載日からさかのぼって1か月前までに最新刊が刊行されたものの中から取り上げる作品を選んでいる。だが,たった1か月にも関わらず,対象となる作品は膨大な数にのぼり,どれを取り上げるかの選定に頭を悩ませることも珍しくない。
取り上げたい作品がたくさんありすぎて困る,のであればまだいい。悩ましいのは,大量の作品が刊行されているにも関わらず,いまいちピンとくる作品がない,ということだ。これだけ数が多いと,一部の話題作を除いて,どれも似たり寄ったりに思えてしまうのである。仕事として記事を書いている筆者たちですらそうなのだから,読者は毎月,限られた本代をどの本に費やそうかと頭を悩ませているに違いない。
一見すると似たり寄ったりに見える作品も,実際に読んでみれば光る部分は多々あるのだろう。だがその輝きは,あまりに強すぎる話題作の輝きや,ほかの無数の光の中に埋もれ,なかなか我々の目に届いてこない……というのが,現在のライトノベルを取り巻く状況なのではないだろうか。それを嘆くのは簡単だ。しかし「放課後ライトノベル」は,そうした現状を認めたうえで,
少しでも埋もれた輝きを拾い上げられるコーナーでありたいと思う。
幸いなことに,4Gamerの中では割と「場違い」であるはずの本連載も,多くの読者の支持を受け,こうして100回までたどり着くことができた。これからも引き続き,ゲーマーな読者の皆さんにライトノベルの魅力を伝えるお手伝いをしていけたら幸いだ。
そして読者の皆さんも,この機会にぜひ,
本連載のバックナンバーに目を通してみてほしい。きっとそこには,あなたがまだ見ぬ名作との出会いが待っているはずだ。
■■宇佐見尚也(ライター/天長地久)■■ 『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。初めは読者として,やがてはライター,レビュアーとして,思えばライトノベルとの付き合いもずいぶんと長くなったという宇佐見氏。「ここまで来たらもう,一生付き合っていく覚悟を決めたほうがいいのかもしれませんなあ」と感慨深げに語っていました。次回以降も引き続きよろしくお願いします。 |
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