Ubisoft Entertainmentが世界のコンバットフライトシミュレーションファンに贈る「
Tom Clancy's H.A.W.X」は,混迷する国際情勢を背景に,腕利きの雇われパイロットとなったプレイヤーが,ウルトラハイテク戦闘機を駆って大空の戦いを演ずるという期待作だ(発売時期が2009年第1四半期にずれ込んでしまったのにはちょっとガッカリだが)。
カンファレンスルームでゲームの説明をしてくれたLead Game DesignerのThomas Sinon氏によると,ライバルはエースコンバットシリーズとのこと。つまり,ガチガチのシミュレーターではなく,手軽に飛べてひたすらカッコよく,かつ爽快なプレイ感覚が楽しめるタイトルを目指しているわけだ。一機数百億円もする戦闘機を自由自在にコントロールするなんて,選びに選ばれたわずかなエースパイロットの特権だが,それを簡単に体験できるのであると考えてみれば,大変お得なゲームである。
デモは,中東某国の国境付近,雲霞のような大軍を以て空陸から侵攻してくる敵軍から,クライアントの石油精製施設を守るというミッションだ。E3 Media and Business Summit 2008でプレイアブル展示された南米マップ以外のミッションが公に登場するのは,これが初めてとなる。
E3の記事でも書いたように,衛星写真を元に制作されたマップは,100km四方の広大さを持っており,さらに別の衛星データから高度の情報を得ていて,標高メッシュのサイズはわずか2m。要するに本格的なフラシムをしのぐほど,地形が見事に再現されているわけだ。
ゲームには,戦闘機メーカーのライセンスを受けた実在の戦闘機50種類が登場し,それぞれ特徴的な能力やウェポンが付与されている。
今回のデモではアメリカ空軍の最新鋭機,F-22ラプターが使用された。ベクタードスラストシステムによって,ほぼ垂直に立ち上がった状態で前進できるという,乗ってるパイロットはどうなるのだろうと思えるほどの機動が可能で,搭載しているミサイルは対地,対空どちらにも効果的だ。
守るべき目標には「100%」という数字が表示されており,これは,このまま何もしなければ確実に破壊されるという意味だ。これに限らず,画面上には目標までの距離,ミニマップ,アイコン,そして自機の状態など,実にさまざまな情報が並ぶ。ハイテク戦闘機のパイロットは戦士というよりコンピュータオペレータに近いといわれるが,なるほどという感じ。いずれにしろ,現代戦のシステマティックさが感じられるゲーム画面である。
とはいえ,機体のコントロールはなるべく簡単に行えるようにデザインされているため,ビギナーでも容易に派手なドッグファイトを楽しめるとSinon氏はいう。また,E.R.S(ENHANCED REALITY SYSTEM)で,アシスタント機能をオンにしておけば,無理な機動をしようとしても自動的に制御されたり,ターゲットに向かう最適なコースを自動的に算出/表示してくれたりと便利なのである。とくに,ミサイルに追われたときに脱コースを計算してくれるのは,非常にありがたい機能だ。
視点は通常,自機の背後にカメラが置かれた三人称視点だが,オプション画面からコクピット視点への切り替えも可能。また,アシスタント機能をオフにすると,かなり引いた視点からの三人称表示になり(こちらも切り替え可能),この場合,さまざまな補助情報が表示されなくなる代わりに,戦闘機の持つポテンシャルぎりぎりの飛行が可能になる。
これらを目まぐるしく切り替えて戦闘を進めていくわけだ。ミサイルの先端から見た視点もあって,高速で敵機に近づいていく場面は,かなりクール。
ラプターはステルス能力も高いため,敵のミサイルはなかなか命中しないが,こちらのミサイルは敵戦車,敵戦闘機を片っ端から破壊していく。このあたり,かなりアーケード寄りな雰囲気だが,現実の空中戦でも,戦闘機の世代が異なるだけでとんでもない交換率(こちらが一機撃墜される間に,敵を何機撃墜したかの比率)を記録することがあるので,あながち非現実とはいえないのかもしれない。
煙の尾を引いて空中を飛び交うミサイル。オレンジ色の火の玉になって吹き飛ぶ敵機。燃え上がる敵戦車と,ダイナミックな戦場のパノラマは見応え満点。デモはXbox 360版を使用して行われていたが,独自の描画エンジンを使用したグラフィックスは詳細で美しい。
もっとも,出てくる敵の数はかなりのもので,あり得ないほどのミサイルを発射して,そいつらを次々に葬っていくのは,見ているほうとしてはちょっと単調。現実の戦闘がそうであるように,機械的な作業の繰り返しが多く,今後,ストーリーや演出面の盛り上がりが必要になりそうな気もした。
いずれにせよ,簡単操作によって手軽に現代空中戦の迫力が満喫できるH.A.W.Xは,制作本数が少ないコンバットフラシムのファン期待の新作。前述のように発売日は2009年第1四半期に延期となってしまったが,続報が入り次第お伝えしたい。とくに,いまだに見たことのないPC版でのゲーム感覚がどうなるのかというあたりが,個人的な注目ポイントだ。